高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

松浦晋也『国産ロケットはなぜ堕ちるのか』

国産ロケットはなぜ墜ちるのか

『国産ロケットはなぜ堕ちるのか』

著/松浦晋也

発行/日経BP

 ここで小説以外の本の感想を書くのは久しぶりかも、という今回読み終わったのは、宇宙へのパスポートでもかなり執筆なさっているサイエンスライター松浦晋也氏の本であります。
 というわけで、宇宙開発のことには興味があるが、しかしそれほど深い知識があるわけではない文系人間の感想としてごらんいただけると幸いです。

 そもそもこの本が欲しかったきっかけと言うのは、それもずばり笹本祐一著の『宇宙へのパスポート』にて注釈を入れていたりしていたのを見て知りまして、その後宇宙作家クラブのサイトにてニュース掲示板を拝見させていただいたりして知りまして、ず〜っと欲しかったのですが地元の書店には無く、……さらに、先日のSF大会、G-CONの企画『国産ロケットはなぜ堕ちるのかVS宇宙へのパスポート2』を拝見して、決定的にほしくなり、SF大会会場の三省堂では売切れており、帰宅して即座にbk1にお願いして購入いたしました。


 この本は、国産ロケットが今までなぜうまく進んでいないかについてまとめられた本であります。そして、それは技術的な問題点はもちろん挙げていますが、日本の宇宙開発が行われる体制など、その要因などについて書かれている本です。そして、書いている人は完全な宇宙開発推進派で、そしてスペースシャトルなどの有翼機ではなく、カプセル型の宇宙機をつくるべきだ、という推進派の方です。

 そして、本からはなんというか宇宙開発に対する熱意と言うか愛というか、そういうものが感じられる熱い本であります。
 また、非常に読みやすく、現在の宇宙開発の現状を知るにはかなり良い本でしょう。技術的な解説書ではなく、こういうその宇宙開発を取り巻く環境の問題点を整理する本です。
 これを読めば、良くある「XXX億円がムダ」的な紋切り型のありがちな新聞報道を真に受けず、そこから本質をさぐる、そしてもう少し深くこの手の報道を読めそうです。


 そして読んだあとのロケット開発についての感想……というか雑感。

 なんというか……「金が無いからできないんだ」という話を聞きつつ、しかしそういうのをきっちり比較してまとめて示したものって今まで読んでなかったのですが、思ったよりひどいと思う。体制が。
 まずなにがひどいって、技術者が技術的にただしいと思えることを、政治的な判断、官僚的な機構などの技術的ではない部分で曲げなければならなくなっていること、さらに、諸外国がやっているから日本もやろう、見たいなノリでやられたらたまったものではないと言うことなのだろう。たとえばあちらの国がやっていることを内でもやるが、しかし衛星はひとつしか無いので詰め込めるだけ詰め込んどけ!→結果詰め込みすぎで失敗。のような。
 そして、普通の産業と同じように「日本にはすでに技術がある」という根拠のない自信とともに、まだ未知の世界である宇宙開発の分野に関して強引に押し込んできた、なんというか「気合と根性」「俺が言うことが出来ないなんてけしからん」でどうにかなるみたいな幻想がある様な気がしてならない。


 というか読んでいてあきれてくる。一番驚いたのはのぞみの話で、アメリカが火星探査に金がかかりすぎるため、金を大幅に減らされて非常に苦労した、と言う話を……NHKスペシャルあたりで見た覚えがあり「あぁ、どこの国も大変だな」と思ったのだが、これを見ると、なんとそれでも日本の「のぞみ」よりも多いのである!なんじゃこりゃあ!うわ〜。ということは大幅に削減されたアメリカよりも、日本は根本的に金を出していなかったということか? かなり衝撃的だった。
 スーパーカミオカンテも、小柴氏がノーベル賞を受賞したからこそなんとかなった、そうじゃなかったら大幅に削られて少々やばかった、という話を聞いたりもする。日本は基礎科学に金を出し渋りすぎている。応用は基礎があるからこそ出来るはずだ。そして、その点では宇宙開発って、実は現在はかなり実用になっていると思うんだけどなぁ。日本は大陸間弾道弾とかそういう物騒なものは絶対に持たないのでそういう軍事面ではそれほどでも無いと思うが(そもそも最大のロケットH2Aは液体酸素液体水素エンジン*1なので、これって効率はいいけど燃料を入れたままに出来ないし、入れるにしてもじゃぼじゃぼ入れると爆発すると言う非常に危険なものなので軍事転用は不可能……といいつつMシリーズとかはあるけど)しかし、気象衛星のひまわりシリーズや、そのほかの諸外国で打ち上げている通信衛星などの例をだすまでもなく、非常に応用もされてきていると。


 この本……「がんばってほしいでですね」と他人事のように発言した某首相以下閣僚全員に読ませたい。

*1:液酸液水とも短くして言われることのほうが多いらしい。……自分ははじめのうち何の事をいっているのか分かりませんでした(大汗