高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

小川一水『導きの星(4) 出会いの銀河』

導きの星〈4〉出会いの銀河 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)

導きの星(4) 出会いの銀河』

著/小川一水 表紙口絵イラスト/村田連爾 挿絵イラスト/反田誠二

発行/角川春樹事務所 ハルキ文庫ヌーヴェルSFシリーズ

 大戦を越えたオセアノは、統合連合の元、初めて二足歩行したオセアノ人『歩き人チキ』と同じ名前を持つチキを代表者に、ついに宇宙へ行くまで発達していた。 それは、司が地球、統一国連の意思を離れて、高い技術をオセアノ人に提供したから……そして高度な技術を手にしたオセアノ人たちは……。

 小川一水導きの星』最終巻、完結の四冊目であります。

 今回は、三巻で噴出した問題が、収束していきます。なんというか「これはいったい……」と思っていたことのかなりの部分が収束して行きます。そして……。

 いや、さすがに最終巻でありまして、密度の高い物語。そして、今までの巻にくらべて、巻のなかで流れる時間が短いです。そして、じっくりと、人類と、そして人類が導いてきた生物達との大きな転機が描かれます。

 なんというか……読んでいって、なんかクライマックスは、ぞくぞくしました。なんというか……あれが世界の行く末か。と。
 そして、その後車を運転しながら、ふと思ったりします。「もしかしたら、この地球も導きの星が」とか。そこまでは考えすぎとしても……以下、ネタバレ含む、その1。

 あまりちゃんと見つめることも無いし、あまり見つめる必要の無いことですが、何事にも限界はあります。物理世界であるかぎり、すべては有限。ならば、地球人類にもあのように技術が進みすぎて……ということはありえるだろうと、そして、その先に人類が進む道は……それが小川一水氏はこう描いたか……と。 老い、停滞した地球文明と、そして宇宙へと羽ばたいたばかりの地球が導いた星の文明……。
 一番印象的だったのは、ついに地球へと降り立ったオセアノ人の反応。「これほどの……」と驚くシーン。確かに文明とはそうなのかもとおもったり。別に文明を代えるものが、それを越える文明を持つものであるとはいえないと……。
 そして、同時に二組のカップル。生物として全く違う二人でありますが、彼、彼女の三人で……そのギャップというかがなんかすげえよかった。

 そして! やっぱり魅力的なキャラクター達です。登場し、司とともにオセアノを導いていく三人のアンドロイド・目的人格たち。『アルミティ』『バーニー』『コレクタ』たちですが……なんだかいい娘たちでありまして……それぞれ個性が強くって、だけどどこか統一した感じがあって……バーニーは生存担当の目的人格で、戦い、生存をつかさどります。好戦的であります。そしてコレクタは科学担当。冷静……冷淡ともいえる冷静さと正確さを追求します。そして、アルミティ。彼女は経済担当。経済をつかさどり、そして三人の目的人格をまとめるような存在であります。一見一番普通ですが、結構暴走するかも……。 読み始めた頃は普通だったんですけど……読んでいく上での彼女達の成長が。そしてそれぞれ……いいなぁ。と。

 そして! 時を越えていく司たちの前に現れる、オセアノ人の、右耳の折れた女性……。彼女はどの時代でもキーになっていくのですが、その彼女達がまたいいかんじなのであります。ところどころで青春してます。


 以下ネタバレ含む2

 最後はハーレムエンドですか?(コラ というわけではなく、やはり最後は司は選んだわけですね。ただ、それが結局そういう(ぉ
 という戯言はほっといて……時をわたってきた司たちが、一番最後にたどり着いたオセアノで、チキに出会うのですが、彼女と、昔の話をする司、というのが、すごく印象的でありまして……。
 そして!なんといっても最後はベテランなキャラクターの方々です。彼らは長い長いときを不死になり統一国連の議員として世界を束ねている方々……。外見が若いが、しかし老練した雰囲気を持つ二人、議長をつとめ、長いときを見る人、そして戦場で散った一人……いいキャラクターであります。
 実は一番一途で純だった、と思えるひげのおじさんが……何気に一番好きなキャラかも。。時の彼方で……ふたたび司と会うことがあるのでしょうか。

 それからちょっとだけえらそうなことを言うと……もっと壮大に展開しても思い白いかな〜とか。思ってみたり。いくつか、たぶん小川氏もわかって小さくした部分があるだろうから、そこをもっと大きく広げて壮大に。そこがもうちょっと違っていたら……星雲賞で、第六大陸導きの星は完全に票を食い合って共倒れ、などという妙な事になっていたかも(ぉ


 そしてイラスト。四巻の口絵にあるキャラクターファイルのチキがなんともわ〜〜〜かあ〜い〜。というかんじなのであります。そこら辺が本文のところどころにある描写や話とともに、なんとも不思議な感覚に。それがさいごに「ああ」となんとも不思議な感覚が。

 そして……やっぱりこれを読んだ後に、空を見上げて、やっぱりちょっともしかしたら……という感覚にひたってみるのもいいかも。

評価は10中8.5 意外と読む人を選ぶかもしれません。このボリュームですから。ですが、おすすめです!
 かなり著者氏があとがきで『導きの星のBGMはエディエマス「世紀を越えて」』といってましたが、自分ちょうどこの曲が入ったCDを聞きながら読んでました。読みながら「うわ〜あいすぎ」とか思ったり。