高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

冲方丁『マルドゥック・スクランブル』(全三巻)

マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル』(全三巻)

著/冲方丁 イラスト/寺田克也

発行/早川書房 ハヤカワJA

「なぜ、私なの?」「死んだほうがいい」……少女娼婦バロット。彼女は、彼女に新しい身分を与え、囲っていた男に、車の中に閉じ込められ、爆炎に焼かれる。 ――次にバロットが意識を浮かび上がらせたとき、そこには、瀕死の彼女を助けた、委任事件担当官のドクターと呼ばれる男と、そして同じく委任事件担当官のウフノコック――ねずみの姿を持ち、自らをあらゆるもの……武器にも姿を変えられる、いや、万能武器として生まれた彼がいる場所。
 バロットは、自らに施された「マルドゥック・スクランブル09」の適応による能力と、新しい環境を感じながら、すごしていく……。しかし、バロットを焼き殺そうとした男が放った、別の事件担当官の手がバロットに迫る――。

 このライトノベルがすごい! でも、このSFがよみたい!でもでていて、も〜気になっていた本であります。シリーズ三巻というより、上。中、下といったかんじで、完全につながっている作品でありますので、三冊まとめて読み終わって読了であります。


 この作品、SFです。そして、それと同時に、一人の少女が、脱皮して、勝ち抜いていくために、新たに生きるためへの物語であります。

 実は、冲方丁氏の作品を読むのはこれが初めありますが、あらゆる面ですごい。物語の流れ、つながり、そして……ありがちな方向に流れそうで、絶対に流れないこと、読ませ方、なんかすごい。
 そして、いろいろなところを、著者氏本人は「現実のほうが」と書かれていますが、しかし、それを正面から書いている感じがするところがすごい。また、キャラクターが。

 自分などは普段、電撃文庫MF文庫J周辺を中心に読む人で、ハヤカワ文庫系は、ほとんど話題になっているから、という程度しか読まないのですが、そうやって未チェックで、気になっているけど読んで無い人、とりあえず読んでください。読むべきです。

 以下ネタバレ含む。


 物語の中では、実は始まりから最後まであんまり時間がたってなくって、その間の物語が丁寧に書かれているというかんじで……特にカジノのシーンは圧巻であります。戦闘シーンなんかより、ずっと緊迫感があって。そして、自分は、そのカジノでのあいて、アシュレイと、ベルウィングが、なんともお気に入り。そして、その前でドレスを着て、お嬢さまを演じているバロット。いや、これも戦いか。
 自分は手札の基本的な型なかはともかく、詳しいルールを知らないんだけれど、それでも緊迫感が伝わってきて、思わずこっちもうわっと飲み込まれていました。


 そして……はじめはなんか妙な人だ、と思ったドクターとかも、物語が進むにつれて、自分もバロットとともに彼らのことが分かってきて、なんかだんだん好感もてました。ウフノコックは、なんというか十二国記の楽敏というか、単にねずみだからというより、本質的にいいいとなんだな〜、そしてこういう星の巡りあわせと言う感じで……。

 これは三冊で一つの物語です。一冊だけ買って読み、もし万が一本屋さんが開いていない時間に読了した場合……ものすごく後悔するでしょう。三冊一度に買って読むことをお勧めします。

 また、冲方丁氏のサイト『ぶらりずむ黙示録』で、7月一杯まで(この期限がたぶんなにかその先にあるんだろうということを予感させますが)マルドゥック・スクランブル、プロモーションが公開されています。

評価は10中9。なんつーか自分の筆力ではよさがまったく伝わらないけれど(汗 とりあえず気になっていたらとりあえず読みましょう!