高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

ジュブナイルポルノレーベルの非エロについて。 …… 微妙に波に乗り遅れた人の日記*1

 平和さまkim-peace)が、ライトノベルとジュブナイルポルノ間で起こるエロゲノベライズ争奪戦という興味深い記事を書かれております。

 というか、ハーヴェスト出版が……。という感じはありますな。ハーヴェスト出版パラダイムノベルズと並ぶアダルトゲームのノベライズを多く出版している出版社ですが、結構丁寧にノベライズしている作品が比較的*1多いという印象をもっていたりとかしていますのでいろいろ。

 で、話題に出ております話であります。
 平和さんもそうお書きになっておりますが、ジュブナイルポルノレーベルと、ライトノベルレーベルとの間でのノベライズの争奪合戦というのはあまりないと思います。というのは、わかりやすくいうと……最近だとつよきすシリーズがあるでしょう。
 あれはジュブナイルポルノのノベライズでも複数社から、そしてメディアミックスではメディアワークスがコミック化を手がけていたりしますが、そういった感じである程度棲み分けが可能かと思います。もちろんこれは、著作者が許諾したり、独占契約をどこかと結んだりしていないという条件になりますが、まぁそれは別問題。
 というかここら辺が微妙で、何とも不思議なんだけれど、これがバランス感覚というものなのかなぁと思ってみたり。

 わりとジュブナイルポルノの市場と、ライトノベルの市場は、互いに購買層は重なっているかも知れないが、市場としては明確に棲み分けができているのではないかと最近思っています。

 というのは、他の方も書いていらっしゃいますし、平和さまもその点ご承知だと思います。
 で、心配(?)していることと言えば、ジュブナイルポルノレーベルがライトノベルの分野になだれ込んでいくのではないかという方向だったりします。
 いや、それが別に悪いと言うことではありません。それ自体は。
 ただね、ライトノベルジュブナイルポルノを横断的にみていたりする自分としては、非常に利己的な考え方だとわっかっていますが、その参入と言うことは成功しようと失敗しようとあんまりうれしいことではなかったりするわけですよ。
 どちらに転んでも嫌、みたいな。この辺りがジュブナイルポルノの作家氏がライトノベルに進出するのとはまた違う話だったりするのですが……。(こっちは応援というか、ありがたく読ませていただくというか、楽しみに待つというかそういう感じなのでいいのですが)

 どういうことかというと、

  • ジュブナイルポルノを出版している出版社はジュブナイルポルノやそれに類するもの以外の商材をもたない比較的零細名ところが多い
  • そういったところがジュブナイルポルノでの地道な営業で出た収益を投資して非アダルトのライトノベルなどに打って出る。
    • 最初はノベライズ中心戦略で。
      • 営業努力とアダルトゲームに比べて高いロイヤリティーを支払ってそれなりに有名な原作を確保
      • 良質ながら世に出ていないアダルトゲームの原作を、非アダルト化して出版
      • オリジナルならば他のレーベルで活躍している作家を、営業努力でブッキングしたり、場合によっては編集者ごと引き抜く
    • 次に自社で活躍していた作家陣に依頼してオリジナルの作品を作成。
      • 結果としてジュブナイルポルノのレーベルのほうが手薄になってゆく……。
      • 非エロが成功し始めると、ジュブナイルポルノとは比較にならないほど大きな「メディアミックス」という果実がぶるさがっているが、そちらの方面になればなるほど、ポルノを切り捨てにかかる・切り捨てなければ社会的に認められないという話になってくる。(大手企業の後方支援が受けにくくなるとか)*2
  • 当然ながら経営体力的に厳しい零細企業が多いジュブナイルポルノの出版社は一回でもこけると出版社もろとも吹っ飛のでは。

 で、これで読者である私(どちらかって言うと保守派?)が受ける利益といえば、ジュブナイルポルノ作家の非ジュブナイルポルノが読める確率が格段に上がるということだが、それ以外はほぼ確実にジュブナイルポルノのレーベルが消滅することを意味すのである。

 いや、そんなのは心配のしすぎだのとかそういう話はあるのだが……。でも一般的とはとてもじゃないけど言い難いジャンルの本を読んでいるとそういうところを心配してみたり。というか最近なんかやたらと倒産とか目立つ気がするんですが。

 というわけで、もしジュブナイルポルノレーベルがライトノベルに進出するのならば、できたらじっくりと、あんまり無理せずに出していってほしいと思ったり。堅実に今までの商売(=ジュブナイルポルノ等)を続けつつ、それに支障が出ない範囲で新しい分野に挑戦する……これって出版業界に限らず、どんな業種でも一緒だとおもわれますが。*3

 とりあえず美少女文庫は出版社の性質上ジュブナイルポルノからライトノベルへ転身ということはあり得ないし、わかつきひかる氏など、すでにライトノベルに進出なさっている方もいるし、そういうのが安心なのですが。

 さて、最後に……競争の激化や市場の食い合いなどについては、自分などは、官能小説とジュブナイルポルノの市場の食い合いの心配をしていたりしていなかったり……。いや、なんか最近明らかにハーレムものというか、これもうほとんど濃いジュブナイルポルノ(黄支亮氏の作品とか)と大差ないのでは?(まぁその、味付けの違いはありますが)というものが出てきていたりするわけで……。
もっと昔は、もうちょっと違う風味が多かった気がするんですが。まぁそれもアレですが。



まぁともかく。



そういえばライトノベルからジュブナイルポルノへ進出というのはやっぱりないんだろうなぁ……。例としては、一部でジュブナイルポルノの起源とも言われるクリームレモンシリーズの、新作のノベライズををメディアワークスが出してたり*4しましたが(中々クオリティが高い)……。
また、「ジュブナイルポルノレーベルから非エロが出ることはない」みたいな話がありましたが、実はそんなことはなく、出た例はあります。今は事実上廃刊状態ですが、ケイエスエスノベルズなどはそうです。雑破業氏のジュブナイルポルノが出ている他、LIBIDO作品や、エルフの遺作等のノベライズが行われていたノベルズですが、一部で人気のある「マール王国の人形姫」がノベライズでこのノベルズから出たりしています。当然ですがライトノベル・ゲーム原作ノベライズで、実はこれ、結構小説単体としても完成度が高く、自分はゲームをやったことがないのですが(というか読み終わってから原作付だと気がついたくらい)結構楽しく読みました。ファンの方によると一部原作とストーリーが違うそうで。

 まぁ、どちらも続きが出ていないのでアレですが……。

*1:あくまでも比較的なのが、ノベライズ作品の質のばらつきというか、何というかを指し示しているのがアレなのですが……。

*2:最近は美少女ゲームからのアニメ化などもあるので一概にそうは言い切れない面があるが、それってほんのごく一部の上澄みだけ

*3:ここら辺のバランス感覚を失ったりすると……。たとえば本業は黒字なのに、不動産に手を出したあげくバブル崩壊、みたいな……いや、出版の場合は本業なんでしょうが……。

*4:何故か電撃の図書館でも電撃屋でも検索しても出てこないという……実は黒歴史化しているのか??