高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

ライトノベルが夕暮れに差し掛かっているというのは本当か

 最近あちこちでライトノベルは夕暮れに差し掛かっているという話を拝見するようになった。って、結構前から話があって、議論し尽くされた感があるけれど、どうなのだろうか。ということを、ライトノベル好感度アンケートを答えるとき、気がつくと自分ももうライトノベルと出会ってから10年たつのだなぁ、ということを思い至り、それからid:trivialさまが興味深いことを書いていらっしゃるのを拝読させていただいたりしていろいろ、ちょっと考えたり。


 考え方としては自分が見た限りこんな感じ。

  • ライトノベルは1990年代に最盛期があり、それが2000年代になって表に出るようになったとはいえ、すでに下火である。
  • 近年のブームと呼ばれる風によっていろいろな出版社が参入しているがその割りに増えないパイを奪い合っているに過ぎない。
  • コンテンツ産業が注目されるようになってきている今、すでにメディア戦略が固まり、また企画段階からメディアミックスを前提に膨大な投資がされコミックス業界やゲーム業界を離れ、いまだあまり手をつけられていないライトノベルにコンテンツのバイヤーたちが来ているだけで、ブームはそもそも存在しない。
  • ライトノベルブームというのは、今までよくも悪くも独自のポジションを保ってきたライトノベルから外に出た作家が活躍し始めたり、ライトノベルで本を覚えた世代が作家として成熟し活躍する世代が出ているからだ。

 などなど。うーむ。別にこれは並べただけで自分がそう思っているというわけではありません。

 個人的には別によければいいので関係ないと思ってはいるが、なんか最近のハードカバーや新書化の動きを見ると、なんとなく心配になったりするんだよなぁ。
 なんだかんだいって電撃の単行本は全部持っていることに気づく今日この頃なんだけれど……単行本として非常にクオリティが高く、すばらしいものばかりであってひじょうによかった。
 んだけれど、販売のほうだとどうなんだろう、と辛口で行くと、どれも文庫としてのライトノベルがあってこそであって、その助走を使いつくしてなんとか出している、としか言えないと思う。 ライトノベル以外の本読みの層に打ち出すにしては、宣伝の方法が微妙だったし。
 さらに言ってしまえば、地方じゃなかなか買えません。売ってませんで結構苦労しました。いつも電撃文庫や電撃コミックスが平積みになっている店でいつもお世話になっているんですが、無い。まぁこれは売れちゃったからかもしれないといえば層なんですが。
 それに値段も、ちょっと無理しないと買えませんし。自分はちょうどタイミングよく社会人となり、自由に使えるお金が増えたので全部買えましたが、学生だったらたぶん買えないかなぁ……。いや、自分のことなのでいろいろ無理をして読んでいたと思いますが。


 それから、新人さんがどかっと出てきて、そしてばらばらと辞めていくというこの異常事態が一番どうかと思う。特に、ライトノベルを書くための専門学校出身者っぽいのがばらばらと出てきて、それぞれしっかり良いのに、どうして味付けが似通っちゃうって言うか、三冊並んでいてどれがいいか、といった場合に「三冊全部買う」という選択をする人が今少ない以上、どうしてもこう、作家の地位というといいすぎかもしれないが、一人ひとりの作家さんに行くお金が減っているんじゃないかという余計な心配もしたくなってくる。
 さらに、最近になって再び、同名で作品が無いのに明らかにライター上りの非公募の新人作家がよく「それ」とあきらかにわかるのが出て来ているのが気になる。要するに読んだ後、ちょっと辛口に言うと「つまらないノベライズ」を読んだ後のような気分になる奴である。ところで原作はどなた? と聞きたくなるような奴だ。大抵イラストレータは非常に良い方が担当なさっていて、「イラストレータは原作のキャラクター原案の方なんですね」などと思うようなやつだ。誤解しないように書くが、別にライター上りの非公募が悪いというのではなく、おそらく公募新人賞に出たら即落とされていいるであろうというようなものが出てくるのが気になるのだ。
 もっというとパターン化ということだろうか。最近自分の中でのテーマが「形式美」みたいなことなのだが、これとパターン化はまったく意味が違うのは明らかだと思う。○○を出せばある程度取れる、たとえば「困ったら動物と子供を出せ」といった泣かせドラマのちょっと前の話みたいなことだが、それはなんというか今までの蓄積があればこそなわけで、それを食いつぶしているということに無自覚に創造性の無いつまらないものを出し続ければ壊死し始めるわけで……。

 それからもうひとつのぼそり。ジャンルから作家が流失しやすいのではないだろうかということだ。新しく入ってきた良い方はライトノベルでは非常に出版ペースが速く、よい作家の方は一年もあればそのレーベルを代表する作家になることもできる。しかしライトノベルをひとつのステップとだけ考えている作家の方がいるばあい、そこからさらに作家氏の目的の場所へと“通過”してしまうのではないかということ。
 そして、いままでライトノベルの読者に愛読書を執筆してきた作家の方が、ライトノベルから離れるということになるかも。他の市場がライトノベルの作家を買いにくるということに。
 そのときに市場から、お客もついでに連れ去ってしまう。よって市場規模として小さくなるのではないか、などという考だ。
 こう考えても、実際にライトノベルを“通過”して単行本を出し、見たいな事は実際ごく一部しか成功していない気はある。少女系だと結構あるみたいですが、少年系だとなかなか少ない。だけれど、最近のライトノベル*1が各方面に拡散している感から行くと、増えるという気はするのである。例の“通過”の話も、逆にライトノベルを読むようになる人だって多いだろうし。


 でもこのあたりってしょうがないんだよなぁ〜と思ったりする。なぜかって、自分もそうだもの。好きな作家の方がほかのところにでて本をだせばそちらを買うから。自分は読んでしまうのでアレだが、そちらのほうを読んで、ライトノベルから離れる、というパターンはやっぱり、これから多いんじゃないかなと思う。それに分類上のひとつとして利用しているだけならともかく、別にライトノベルだからって読んでいる人なんてほとんどいない。商売にしている人以外ほとんどいないだろうと思うし、少なくともそんな人たちに向いて商売をしていていては偏ってしまうので、一般的にターゲットとなりえる層ではないことは間違いない。自分だっていま良いと思う本がライトノベルにあるというだけで、別にライトノベルと呼べるから読んでいるわけじゃないし。それは自然な流れだ。

また、提供側から見ると、ライトノベルの市場って一見巨大に見えるほかの市場に比べたらずいぶん小さいということと(単価がどうしても安いだろし)、ライトノベルライトノベルたるゆえん、みたいな部分は大抵制限になってしまって、窮屈に感じることもあるんじゃないだろうかということだ。だけど、ここであえて言うと、ライトノベルの市場は決して小さくはなく、これから成長するのは間違いないと思う。根拠? そんなもんは無い。ただ、自分が読んで面白いと思える本がこれだけあるんだから、そうかんたんにはだめにならないと思うのだ。


 といいつつ……最近ライトノベルを引っ張ってきた電撃が失速気味なのが一番現実的にちょっと心配。失速気味というのは、自分の主観かもしれないし、人気シリーズはしっかりあるけど……新シリーズになる比率が減ってませんか? 気のせい?

 で、一番最後に考えると、一番長期的に問題なのが新人の作家の方々の大量デビューしてぼろぼろ辞めていくという状況なのではないかと思ったりする。まぁここらへんはなぁいろいろあるだろうけれど。

 とかつらつら考える夜更け。うーん、最終的には「まぁ別に自分は好きな本をよむだけなので」という話に収束しそうな具合で、いろいろと破綻しているが、まぁぼやぼやと考えるですよ。……寝よう。

*1:しゅーくりーむ分的なノリで