高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

清水マリコ『ネペンテス』

ネペンテス (MF文庫J)

『ネペンテス』

著/清水マリコ イラスト/toi8

発行/メディアファクトリー MF文庫J

 感情を押し込め、心動かさないように、動揺しないように過ごしてきた少年、西村祐胡。祐胡の心が動揺すると、“よくないこと”がおきてしまうから、だから感情を閉じ込め、人と深く付き合わないようにしていた。
 しかし、そんな祐胡のまわりでは、祐胡を動揺させるような、不条理な、奇妙な少女達が現われ、そして祐胡を揺さぶっていく……。そして、祐胡が動揺すると、そこには必ず、嘘の世界が顔をだす……。

 『嘘つきは妹にしておく』『君の嘘、伝説の君』『ゼロヨンイチロク』の著者、清水マリコの短編連作集。MF文庫J10月の新刊。1999年から2000年にかけて、ソフトバンクパブリッシングgMジーエム』に掲載された「蝶はすぐ死ぬ」を大幅に加筆修正したものだそうであります。

 ネペンテスとは、うつぼかずらのこと。


 なんというか、不思議な、匂いのする小説といったらいいのか。 なんか総じて不気味で不思議で、ホラーやミステリーではない。やはり、都市伝説というのがふさわしいものだけれど、それにしても……なんていうのかな、甘い。甘いにおいのする。 動揺しないように、と殻をはっている少年だが、しかし、それでも中は普通な少年で、そそして次々と現われる少女達に、“よくないこと”をおこしてしまう。

 というか出てくる少女達が、それぞれなんか魅力的な少女達で、それによって動揺する主人公……という形でもある。そして、主人公は、妹がいるのだけれど、その二人で生きていくそういう雰囲気が……。

 あ〜、かなりおすすめしたいのですが、その、やはり清水マリコ氏の本は、こう雰囲気が重要で、なのでその雰囲気が合わない人や、なんというか文章と言うかそういう矛盾ばかり木になってしまう人は、あまり会わない本なんですが、そうじゃない人にはすごくおすすめなのです。なのですが……自分の筆力では表せません(汗
 なんというかな、読んだあと奇妙な晴れやかさがある。

 以下ネタバレ含む。

 そして、出てくる家庭、主人公の家庭がすごく生々しい。兄、妹だけで、母親は仕事に追われる。だから妹は兄を慕い、兄は妹を思う。兄は家では普通のよき兄だったりする。そして最後は……。
 さらに、「トオ」が登場しますが、トオはあのトオとそっくりですが、背景が違うようです。別の世界の同じトオってというところかな。

評価は10中8。どかん!と評判になるような本じゃなくって、じわりじわりと広まる本かな。おすすめです!