高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

うぶこい応援委員会『うぶこい 〜初恋成就戦争なんだからねッ!!』

うぶこい~初恋成就戦争なんだからねッ!!~ (ジグザグノベルズ)

『うぶこい 〜初恋成就戦争なんだかねッ!!』

著/うぶこい応援委員会 児玉新一郎 わかつきひかる 柴はすみ イラスト/屡那

発行/リーフ ジグザグノベルズ

 ジグザグノベルズが放つ、そのまんま「うぶこい」をテーマにしたアンソロジーというのか、骨子を元にしたストーリー集、短編連作作品集であります。ストーリーは五話で形成され、一人の少年、榎本成太を巡る「うぶこい」のストーリーであります。

 物語は「委員長で幼なじみ」「妹的女の子」「水泳部のエースでお嬢様」「図書委員」「電波(?)マットサイエンティスト」と早々たるラインナップであります。 平たく言うとマルチストーリーの美少女ゲーム形式とでもいいましょうか。

 自分はけっこうこういうのも好きでありまして、古くは今では『ダディフェイス』を代表作とする伊達将範氏による『ルームメイト』のノベライズ版など読んでまいりました。
 そんな自分なのでありますが、別人格方面でずっとファンでありますわかつきひかる氏がジュブナイルポルノ以外の作品に進出の第一弾というわけで入手したのであります。

 というわけで、読みました。 結露にから言うと、わかつきひかる氏による「アイドルはハリネズミ」と柴はすみによる「頑なクリエイション」が非常によかった。

 わかつきひかる氏の「アイドルはハリネズミ」は、学園のアイドルとして、自らのプライドとともに、さまざまに自らを飾り、孤高の存在としてプライドを守ってきた少女が、一人の少年に重大な秘密をみられてしまったことから始まる、ストーリーであります。
 なんというか……読んでいるうちに、一緒に彼女の秘密をのぞき見てしまったような気恥ずかしさを覚える、こうツンデレの教科書のようにきっちりと押さえたツンデレでなんというか……自分の中でツンデレというものを意識したというのは「天使になるもんっ」の鈴原夏海なのでありますが、彼女も水泳で高飛び込みの選手だったというか、まぁそいうのもちょっとはあるんですが、なんといってもそのふりまわしっぷりとか、みごとに振り回された末のさまざまな動きとか、そういうものがなんともいい感じなのであります。
 読んでいるうちに覚えるこの気恥ずかしさは、彼女の秘密にも起因するんでありましょうが、ここらへんってわかつきひかる氏の作品に共通するなんともあるんでありますが……いや、これは自分だけかもしれないんでありますが……そういう秘密をみちゃったてきな気恥ずかしさとともに、ヒーローというか相手の少年の心境になってみると、なんというかこうむずむずする気恥ずかしさがあって、それがなんともここちいい。

 というわけで以下、ネタバレ含む。

 とりあえず、「競泳用水着萌え」(ぉ  などとそれだけだとアレなのですが、彼女がとある事情で競泳用水着を脱ぐシーンというかそういうのがあるんでありますが、そういったディテールというかがなんともよかった。さらに言うと、少女たちでとあるホームページをみて、全編通しての男主人公「榎本」は「榎本くんはみないでちょうだい」と見せられないというシーンがあるのだけれど、その後を通じる女性の結果炊くというか、かしましさというか、そんななかで敬語をつかってしっかりと話をする少年の気分とか、そういうのがなんともなかなかでありました。


 また、もう一作の『頑なクリエイション』は、一人とそして本の世界の世界を頑なに持ち、自らの世界だけで他人との接点を閉じ、生きている少女が、自然に、自らのテリトリーに入り込んでくる一人の少年に次第に気になっていき……その末で自らの身を置いていた世界の隙間から、様々なものが見えてきて、いろいろなものを見つめていくというストーリー。
 この作品のヒロインの感覚は、結構共感を得る人が多いんじゃないかと思う。自分もそんな感じでありました。自分の世界が変わっていくと言うことはおそらくこういうことで、変わっていく自分と、そして相手にもなんとなしに不安を覚えて、だけど考えてしまう、といった感覚がなんともいい。



 さて、最後にちょっと苦言を呈しておく。舞台設定と骨子が微妙なのはもう少しどうにかならなかったのか、と。まず蛇足もいいとこの天使という存在。微妙すぎる。無理して出すことはなかったような気がするのだが……頑なクリエイションでは、天使がキーになっているが、この作品にだけでてくればよかったと思う。

 もっと舞台設定だけにしては駄目だったのだろうかとちょっと思う。煩雑、といっては駄目なのかもしれないが、地域の設定、学校の設定といったこの手の小説としては必要不可欠ながら、ある程度型があって設定するには特にイラストレーションの意味で大変な部分である。そういったところをコンセプターのような役割をする人物がまとめるだけで、多数の作家の参加を願って短編連作にしたらよいのではないか、とかそういう風に思うんでありますよ。もちろん、複数ヒロインに対して野郎一人といった形にこだわらず、パラレルワールドにしたっていいし、時間軸を同じにもってこなくてもいいし、それこそいろいろな形をもってきてもいいわけでとかいろいろ。
 もうちょっと、編集者というか、コンセプトをデザインした人がもうちょっとがんばってほしかった。そうすればもうちょっと違うまとまりかたがでてよかっただろうにと。

 だからといってわかつきひかる著の「アイドルはハリネズミ」と柴はすみ著の「頑なクリエイション」の個々の良さがなくなるわkじぇないんですが。


評価は「アイドルはハリネズミ」と「頑なクリエイション」に限り10中8。

 というかぶっちゃけ、この二作品、二作家の方にもっとスポットライトを当てた作品が出てほしいと思います。特に、わかつきひかる氏は作家としてのキャリアも長いし、さらに飛躍を望みつつ。

最後に。 自分は後書きは一番最後に読む派なのだが、どうもこの作品のコンセプトを手がけたらしいが委員長と名乗る人物が書いた後書き。 ちょっと開いた口がふさがらなかったのは自分だけか。