榎本秋『ライトノベル・データブック』
『活字倶楽部』の雑草社の出版、活字倶楽部などでも多数書いている榎本秋氏などによる、ライトノベルの本であります。
「活字倶楽部の雑草社がライトノベル本を出せば、たぶんそこにかなうところは無いだろうなぁ」などと言っていた自分としては、一番始まりで著者氏のサイトで拝見したときは「ついに!」とおもったわけであります。というわけで、入手し、読了であります。
てか、封印中じゃないのかよ、という突っ込みは却下、自分でしときます(ぉ
内容は、三つの部分で構成されている。レーベル紹介と、作家紹介、そしてジャンル別作品紹介である。
レーベル紹介は、それぞれのレーベルの概略とともに、そこで主に活動する作家の名前などが掲載。ぶっちゃけ今までのやつだとそれほどレーベルを、そのレーベルで主に活躍する作家とともに、といった形でまとめて紹介する形はあまりなかったかんじで、いいかんじ。
その後に作家の紹介がある。というか一番最初に阿智太郎氏が書いてあるのは、個人的には大感動。なにがって、自分は阿智太郎氏のファンでありますから! と言い放った直後、カラフル文庫での著作がある、という話を読み、知らなかった……という程度かよ、と自分で自分に突っ込んでみたり(ぉぃ そうやって紹介されている作家ひとりひとりについてかなり詳しく書かれている。
今まで「作家にインタビュー」とか「一問一答」的なものはあったが、結構こうやって作家ひとりのことをちゃんと紹介したものというのは無かったような気がする。そういうのが書かれていていい感じ。
……今までよく話題に上がっていたが、なんとなく読めていなかった作家氏のことなんかよみ、むくむくと読みたくなってくる。
そして……中村うさぎ氏のところは激しく同意……つうか某新聞に出たとき「エッセイスト」と紹介されていたときのショックといったら(ぉぃ
最後は、ジャンルにわけた作品紹介。 SF、アドベンチャー、ファンタジー、ほのぼの・コメディ、伝奇・歴史とわかれている。
ここでも、一つのシリーズによって一ページ、きっちりとまとまっていえて、ストーリーの入り口の紹介から、どういうところがよいか、そしてこの本についてのいろいろ(メディアミックスのことなど)な情報が書かれている。
……これも読んでいるとむくむくと読みたくなるというか……有名な本はもちろん含まれているのだけれど、なんというのかなぁ、書いている人たちが、ちゃんと自分たちがよいと思う本をちゃんとあげている、と言う感じがする。そうじゃなかったら二士シリーズとかが入っているわけが(ぉぃぉぃ
全体的になんというかな……ライトノベル本は数冊でてきたけれど、これは「ライトノベル論」とかそういう――言ってしまえば本自体にはあんまり関係のない部分――が無く、これぞ正統派、王道の「本」の本でありますな。ライトノベルデータブック、でありますが、ライトノベル図書目録とでもいえるようなかんじ。
とにかく、ライトノベルということについての紹介をしていると言う感じで「なにかのファンに向け、そのファン以外にはあんまりよくわからない」みたいなことがない。それこそ、「この本がいいぜ」って教えているみたいな。「ライトノベルでいい本ない?」とか「ライトノベルのレーベルって何?」「ライトノベルの作家でなんかよさげな作家いない?」と聞かれたときのことを、まとめて書いた、という感じである。
だから、よって、「これがライトノベルなんである!」と言う「論」というものがない王道である
これはこんな本なんですよ、私はここが面白と思うが、あなたにもよんでみてほしい、といったものを、正面から、ドーン! とやっているかんじ。
ライトノベルを扱うことを書いている人は、あると絶対いい。
また、ある程度本を読みなれていて……そうだなぁ、まず本を買ってみる、と言う感じじゃなくて、作家の名前でも本を選ぶ、という感じになった人なんかにも強くお勧めかも。かなり広がると思う。