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高森太郎の日記。@hateblo

高森太郎の日記のはてブロ版です。

戦没者遺族を狙った悪質な訪問販売の話。

本日、法規制はないが、ある意味「他人を欺く行為」としての詐欺的と感じる商売に遭遇した。これは弱みというか、日本がもっている歴史的背景を利用し、悪質と判断せざるを得ない事例である。
私は言うべきことを言ないという事も欺く行為の一種であると考えている。
検索などで何か引っかかって参考になる方がいれば幸いである。

要旨

戦前戦中生まれ以上の高齢者を狙い「戦没者を供養して後世に伝えるため、一枚の額に顔写真と勲章等を載せて、その名と戦没地などを乗せたものを作らないか」というセールスをかけるものである。
訪ねてくる人間は詳細に戦没者の情報を持っているが、これは各地域の遺族会が作った戦没者名簿(英霊簿、等と別の名前で呼ばれていることもある)を利用しているためであると考えられる。
出来上がってくるものは、

  • 遺族が提供した写真
  • 最終階級に合わせた襟章と勲章を印刷して周りに配置
  • 非常に簡単な真鍮の彫刻プレート
  • 油彩用の額縁

であるが、これで十万円以上の金額を請求するものである。我が家では約15万円の請求であった。
私の見立てでは、直材原価を半額とし、粗利を5割で高く見積もっても三万円以下と考える。

セールスの特徴としては

  • 戦没者名簿を持ってそれを元にセールスを仕掛ける
  • 戦没者と直接同じ時期に生きていた人間かをしつこく聞いてくる
    • 年齢を確認すると同時に、戦争について特別な感情を持っている世代かを確認しているものと考えられる
  • このままでは戦没者の記憶が薄れてしまうのでその記憶を留めるために、といった文脈から、これを購入しなければあなたは英霊に敬意を払っていない、といったすり替えをして訴えてくる

対処法として、契約直後であればクーリングオフが可能である。
契約後でも、書面と口頭でクーリングオフの説明が行われていない場合は、クーリングオフ期間が過ぎても解除することができる。(彼らはこれが商品の購入であると言う事を意識させず、善意でやっている無償の団体であると装っているため、この手の説明をしないのではないかと言う)
その他、契約が成立してしまっていても、地元の窓口に相談することでアドバイスなどを得ることができる。

今日の経緯

お宅の戦没者を慰霊するために、写真と勲章入りの額を作りませんか?という商法が我が家に着ていたこと、そして父が注文していたことが判明したのは、2012年7月8日である。

納品しに来たところであった。
全く知らなかったのでどういうものかと聞くと「戦争で死んだ大伯父さんたちの勲章と写真を一つの額にいれてかざってはどうかという人が来て、それで父が注文したのだ」という事である。遺族会の方からという話であったが遺族会という組織はすでに、特に地元では日本遺族会のための集金組織としてしかまともに機能してない事は周知の事実であったため、怪しいと判断。
さらに遺族会というガチガチの保守的な組織では、基本的に地元の業者をしつこく使うのだが、来た自動車が福島ナンバー(近県ですらありません)であった事などを完治して品物を見たところ、それっぽくできているがかなり微妙なものだった。

言うなれば書割のセットのような。一見してショボイ。
価格を聞いた所、約15万円だった。これは話にならない。

というわけで
「これはクーリングオフはできないですかね?」
「もう6月に契約したのだからもうクーリングオフ期限は過ぎている。他にもこの地域で契約してくれた人はたくさんいるんだ、おい!契約書持って来い!」
(と言って持ってきたこの他の契約書もせいぜい3枚程度でそんなに数はなかった)
「他の方の事情はうちには関係ないですよね。父が契約したのですが私は知りませんでした。正直私には詐欺にしか見えません」
といった急に激昂。
「こちらは英霊の供養のために利益を取らずにやってんだ! 消費者センターに電話しても無駄だから警察でも消費者センターにでもかけたらいい!人の顔を見るなり詐欺とは何事か」
等と、ものすごい勢いで怒り出す。
そこで「あなたの顔を見ていったのではなく、商品が明らかに15万円するようなものには見えない。見た限り写真部分は印刷物でありこれらはパソコンがあればそれほど手間をかけずに作ることができるだろう。また、私は仕事から彫金などを手がける方とお付き合いがあるが、彫刻ではなくエッチングで行なってもこんな価格がするわけもない。粗利半分としても3万円以下程度だと思うがどうか」という話をした所突然「もういいわ。こんなところに祀る資格はない」等と言い出し、荷物をまとめて帰ってしまった。

調査結果

父に経緯を確認した所、

  • 6月上旬の平日に注文を取りに来たらしい。その時に見本を見せられ、またセールストークとして
    • ◯◯さんの家と、◯◯さんのい絵にもよってきた。〇〇さんの家は留守だった、といった地元の家の名前を出してトークを展開
    • ◯◯さんの家では頼んでくれた。☓☓さんの家は昔作ってくれたが今回さらに新しくしてくれた
    • みなさん戦争の記憶を留めるために作っている
    • もう戦後かなりの時間が立っているので、今回が最後の機会である
    • 19xx年に◯◯病院で亡くなっている、◯◯◯◯大尉、等と詳細に情報を加えてトークしてくる
    • 我々は善意から、利益を殆ど取らずにやっている
  • といった形を取ったらしい。
  • 価格については明確な価格表があるわけではなく「それぞれの方で異なりますから。おたくさんは◯◯◯◯だから安いですよ、ほかだと倍ぐらいかかる」などといって、約15万円という価格を提示した。
  • 父はその他にも色々と思うところがあって契約したようだ。

その後、すぐに写真を用意できなかったため、写真を貸し出した。その時に預かり証は受け取ったが、父曰く「契約書を受け取ってはおらず、またクーリングオフについての説明もなかった」という事だ。

また一番最初、父が出てくる前に母が応対したようだが、業者は

  • この家に◯◯◯◯大尉のご遺族が住んでいると聞いたが、彼のことを知っている人がいるか、という事を何度も訪ねてきた(この時そういった業者であるとは名乗らない)
  • 母が「私は嫁入りであり、昔のことはわからない。ただ祖母なら知っているかもしれない」と言うと祖母にあわせて言ってきた。しかし祖母は無理があるというと、他にはというので、父は少し知っているはずだというとそれにあわせて欲しいという
  • その後父に会いセールスを展開ということだった。

という事であった。

消費生活センターの休日ダイアルに連絡

今回はこれで済んだが

  • 業者はクーリングオフは無効であると主張していた(これもクーリングオフ期間が過ぎている事は自分の知識と合致していた)
  • 父は契約をしていた。(口頭でも契約は成立している)
  • オーダーメイド品を作っている

ということから、もし支払いを求められた場合、こちらに支払う義務が発生するのではないか、この場合今後どういった対応を取ることが必要か、消費生活センターに聞いてみた。
事情は上記の通りすべて話しをしている。

要旨としては

  • 今回書類の交付を受けていないということであるので、訪問販売の場合、契約する際に、書面と口頭にてクーリングオフの説明をしなければならないとされているので、それがなされていない場合、期間の定めなくクーリングオフすることが可能である。
  • 今回のような高齢者を狙ったセールスの手法としては典型的である。
    • 若い人間がいない平日にセールスをかける
    • 遺族会名簿など、高齢者の名簿を使う。
    • 近所の情報を話して信用させる
    • ◯◯さんの家は契約した、等と言う言葉をセールスに使う
  • 価格表が明確に存在せず、相手に応じて価格を自在に変化させる……値踏みして価格を変え、大幅に割引をしたりするのも典型的である。
  • これらの高齢者を狙ったものは、マニュアル化された対応がある。断られたところで激昂してみせたのもおそらくマニュアルであり、怒ることで驚いて払ってしまうこともあるからだ。
  • 高齢者の家を狙ったものの、若い人間が出てきて断ったケースでは、多くの場合業者は二度と来ることはない。万が一来た場合は「失礼な態度で」しかるべきところに相談したら、お金を払う必要はないと言われたので払いません、といい、会話を切り上げて長く話をしない事。

消費生活センターの担当者の方は、どうやら父が契約書を書面で交付されていない、というところをそこが記憶違いあるいは行き違いなのではないかというところを若干疑っていたようだった。あるいは預り証と言われて渡されたものが、契約書的な内容が書いてあったのではないかということを考えているようだった。

契約書が見つかって、あるいは相手が出したという主張して来て、契約があるのだから払えという話でこじれたとしても、その場合でも地元の消費生活センターかそれに連なる担当の窓口に相談することが大切であるとのことだった。
しつこく来る場合は地元の消費者保護窓口、さらに長時間ドアを叩くといった事態にまで発展した場合、警察を呼ぶことも選択肢の一つとしてためらってはならないとのこと。

また近頃太陽光発電についても悪質な訪問販売があるという事をおっしゃっておられた。これも高齢者の家を狙っているらしい。地元の信頼出来る工務店などに相談すべきなのだとか。

セールストークで出てきた情報について

セールストークの中で出てきた情報は、以下のように実は手に入る。

  • 戦没者の名前や戦死した時の情報、最終階級、勲章等
    • 各地の遺族会で戦没者の名簿が作られており、この中で見ることができる。この名簿は遺族会の会員に有償で配られたのがほとんどであるが(これ自体も同窓会名簿商法的なものだよなぁと思うが、一時非常に流行った)中には市販をしていた場合もあるし、また配られたものも名簿業者や名簿類専門の古書店などに流れている場合が結構あるようだ。これらを参照すれば用意に得ることができる。また、地元の公共図書館で収蔵されており、場合によっては貸し出しも可能なこともあるようだ。
  • ◯◯さんの家に行った、等といった地元の地理的情報
    • これは単純に住宅地図で入手することができる。

話している内容が、マニュアル的にちょっと調べれば入手できる内容かどうかを頭の中で考えておかないと、商品に対する正統な評価に影響を与えることになる。
少なくともこれらの情報を相手が知っていたとしても「よく調べたんですね」という程度の話であって、それが何か特別な意味(例えば、遺族会が全面的に協力しているとか、地元に詳しい業者であると言ったこと)は基本的に無いのである。
これはこの他の学校組織などでも同じで、その組織の話や地元に詳しところを示すことで、まるで公認をもらっているかのように錯覚させられそうになるが、現在はこういう「消防署の”方”から来ました」が多かったので本当に公認や委託を受けている場合には身分証などを示すなど他の証明がなされるはずである。

感想その他

日本人の、ある一定以上の年齢の方は特にだが、戦争に対しては特別な感情を持っている。
正直、この部分に漬け込んだ商法であり悪質だと思う。

彼らが特に敬意を持っているわけでないのは間違いがない。例えば業者の人と話をしている際、その時に自ら持ってきた写真と額をぱんぱん注文伝票を丸めて叩きまくるという事をやるのだが、商売人として注文書というものをまるめてばしばしするのも論外だし、本当に戦没者に敬意を持っているのであればその持ってきたものを叩くというのも論外である。
さらに、父も呆れたのか「話をするのはいいが、写真を叩きながら話をするのはやめてくれ」と言ったりもした。
自分はカタログは見ていないが、カタログよりも実物はかなりちゃちなものであるという印象を受けたそうだ。

品物も、自分がパッと見た感じだと、写真を取り込んで印刷したものを台紙に貼り付け、勲章も当然印刷物である。そこに真鍮に名前などを刻んだプレートがあるのだが、このプレートが単純に切断しっぱなしで、橋がダレている代物である。彫刻機で適当に削ったものだ。額は油彩用の厚いものである。一見これは立派に見えるが実際には油絵用であれば必ず高価な高級品というわけではない。

額は最大限高く見ても8000円程度だろう。思いっきり金メッキの成形品だったので実際には更に安いと思われる。真鍮のプレートは単純に彫刻しただけであり、職業的な経験でだが、メーカに依頼すると彫刻込で一枚2000円程度である。これが2枚で4000円。ネットで検索したらデータ支給でもっと安いものがあった。さらに30万程度の彫刻機で個人でもできる。
更に言うとこのプレート、端が切りっぱなしでタレていた。すこしまるまったようになっているのである。普通はこれ、このままだと見かけがすごくやすっぽくなるので、ハンマーで叩いて整えるのだが、それすらしていなかった。そしてテンプレートにスキャンした画像をはめ込むだけでできる台紙が5000円とかなり高く見込んで直材が15000円……。粗利十倍は無いのではないか。サービス料金が高いんだとか色々あるが、そもそも売りつけに来ておいてサービス費もあるかという話もしたい所である。さらに価格表がなかったところで値踏みをしているようで、更に高い金額を出している方の存在も想像に難くない。(というか父がそういう話しを匂わされたそうだ)

その商売も、ある種の人間が持つ戦争に対する抗いがたい感情を利用して、そこにつけいり「記憶に留めておくにはこれが必要」という話を「これを購入しなければあなたは英霊を大切にしていない」という形で一瞬ですり替えるようなセールストークの展開は、どうにも自分には悪質に思える。
双方が納得すればいい。しかし、こちらから提案したものを受け入れなければ、あなたの英霊に対する思いはそんなものなのか、的に論法を展開して同意を取るということはいかがなものか。
また捨て台詞が「お宅に祀る資格はない」だったが、なんでどう見ても価格に吊り合わないものを高く売りつけるのを拒否すると祀る資格がないになるのかが分からない。昨日だってお墓に草むしりと除草剤を巻きに行って来たところである。

ネットで検索しても情報が出てこない。彼らが戦没者が生きていた時代と同じ時代を生きていた人間をターゲットにしているとするともはや70歳以上であり、具体的に記憶があるとなるとさらに上であるから、あんまり情報が出てこないのだと思う。業者は東京に本社を置き、工場は福島県だという。
検索すると電話帳的なページに当該の会社がでているので、会社は存在しているようだ。が、ホームページ等はない。記載を自分の済むところはそこからかなり離れているので、営業範囲を手近な所から広めていったと考えると、相当数にたような商売をやっているだろう。
子供や孫も、先祖の供養のためにと言われればあまり突っ込んでいくらかかったのか、といった話はしないのではないか。反対しにくい空気がそこにあるいは、一緒に住んでいなかったらあまりクチを出しにくい部分だと思う。だからインターネットに情報が上がらないのであろう。

商売としてはよく考えられた商売だと思うが…不景気なのだろう。みなが生きていくのは大変だと思う。しかしこれらの商法に納得して金を出すのであればよいが、そうでないのであれば、流されることが無いようにしたいと思う。