高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

DL1年制限に惑わされるな! SONY Reader編 ~現状最強は紀伊國屋だけど SONYもがんばってる

もしくはSONYのステマ?(ぉぃ
日本の電子書籍はどこへ向かおうとしているのかと題されたエントリーがあり、確かにこれはないわー、だけど紀伊國屋こんなマヌケな設計するかなぁ、と思って読んだのだけれど、それに対して「DL1年制限」に惑わされるな!Kinoppyは現在最強のクラウド電子書籍だという記事があがっていた。
自分なりに要約すると

  • 再ダウンロード期間というのは、ストアから仮想本棚(クラウドストレージ)に移動する期限の事である
  • 仮想本棚からアプリ側が同期する行為はダウンロードでは無いため、仮想本棚から消さない限りはサービスが続く限り同期できる。
  • 実は本棚から削除しても復帰する機能も残っていたりするんで実質的に問題にならない。

と言う話のようだ。これなら安心である。こんな事情になっているとはしらず大変参考になった。
しかしこのなかで

ただ、この「本棚」というクラウド管理が使えないSony Readerの場合はまた話が変わってしまうようですが

と言う話がでていた。と言う訳で僭越ながら、近頃読書というとReaderを使っている自分が気になっていくつか調べたり、知っている事をまとめてみる。

Readerのダウンロード1年制限はどうなってる?

結論から言うと、Readerについてもそれほど気にする必要は無い
ダウンロード購入したコンテンツは、ダウンロードと転送にこそ専用のアプリケーションが必要だが*1*2、その実体ファイルは普通にエクスプローラなどOS上で見ることができ、コピーなどもできるので、後は失われないように通常のファイルと同じようにバックアップさえ取っていれば読むことができる
ダウンロードしたPCには、Windowsの場合デフォルトでは
(My Docments等)\eBook Transfer Archive\Sony Reader\books\
に保存がなされる。(変更もできる)Macの場合も似たような感じになっていると思う。

Readerは接続するとUSBメモリのように見る事ができ、
(ドライブレター):\Reader\database\media\books\
以下に保存される。

バックアップする時には、PC上の「eBook Transfer Archive」を丸ごとディレクトリ構造そのままバックアップを取るのが一番よいらしい。書き戻すときにはそのまま上書きすればよいそうである
このフォルダをクラウドストレージに上げておけばクラウドの上でバックアップする事もできる。またダウンロードしたコンテンツは、読み出すときには個別にオンラインで認証を必要としない。なので機種を買い換えたとしても、始めに一回機器認証さえすればそれ以前に購入していた電子書籍も読める。(ダウンロード期間に制限がない場合は直接ダウンロードしても良いけれど)
さらには、認証の主体が機器(Reader本体)であるので、Readerで本をダウンロードするPCは常に同じPCを使わなくてもよかったりする。

ここらへんはSONY support Q&A Reader Store で購入した電子書籍を、別の Reader で読むことはできますか?及び「SONY support Q&A パソコンを買い換えたときに何か準備は必要ですか。等を読むとイメージがつかめるかも知れない。後者の「パソコンを買い換えたときに何か準備が~」ではパソコン間の電子書籍データ移動にReaderを使ってやれと書いてあるが、実際には「eBook Transfer Archive」のフォルダをごそっとコピー上書きでよいそうである。(サポートに確認済み)

一方、SONYタブレットでの対応だが、SONYタブレットは実際自分持っていないので分からないと言うのが正直な所ではあるのだが、SONY support Q&A [SGPT*]「Reader」アプリで購入した電子書籍のバックアップ方法は?によると、あっけらかんと普通にコピーしてバックアップしろと書いてある所を見ると、バックアップ・リストアはこれでできるのかもしれない。

ただしReader用にダウンロードしてあるデータを、バックアップ・リストアと同じ手順でTabletへ転送できるかは不明。両方持ってる方だれか試してください!*3
もしこれが可能なら、クラウドストレージにmhnデータを保存しておき、ダウンロードしてきてReaderアプリで開くというプチ仮想本棚みたいなことも可能かも…?
一方これが不可能だとすると(Sony tabletではReader用のデータが開けないとすると)、ダウンロードに期限があるデータで今後の機種変に支障が出ると思うんだけど、自分は普通にできるんじゃないかと思っている。
理由はSONY Readerが採用しているDRM方式がそう言うものだからだ。

技術的背景 Marlin DRMってなんぞ

以下、面倒くさくて分かりにくい説明がだらだら続くので要約を。基本以下の所だけ理解しておけばOK

  • Readerで採用されてるDRMPS3やPS Vitaと一緒
  • 機器認証さえすれば、同じIDに結びつけられてる機器なら同じファイルが読めるよ!(最大5台まで)
  • ファイルは普通にコピー自由。ただし暗号化されているので認証機器でないと読めません。
  • Readerを譲るときはあらかじめ機器認証を解除する事!

さて細々とした説明を。
こう言う事ができるのは、ReaderのDRMが「機器認証型DRM」である「Marlin DRM」であることが関係している。
Marlin DRMがどういうものかというとSONYの技術資料が非常に分かり易いが、

  • 機器認証すると、サーバから認証された対応機に復号化の鍵が渡される
  • 同一ドメイン(ReaderStoreの場合同じSONY ID)では復号化の鍵は同じ
  • 一度機器認証するとその後オンラインである必要が無い
  • オープンな規格であり、メーカを跨いで利用できる

と言う特徴を持っている。PS3,PSP,PSVitaを持っている人は、ここら辺で採用されているDRM方式だというとよりわかりやすいだろうか。
もっと砕いて言うと、

機器認証とは

  1. ユーザIDと、機器をあらかじめ結びつける機器認証をサーバが受け付ける
  2. 機器認証がなされると、サーバは対応機器向けに、ユーザIDに結びついた復号化の鍵を発行する
  3. 再生装置は鍵を受け取って機器に保管する
  4. 機器認証では、同じユーザIDに結びつけられた場合は同じものを復号化できる能力を持つ鍵を発行する。*4

と言う事をする。

コンテンツ購入では

  1. ユーザIDで購入がされると、サーバはそのユーザID向けの暗号化DRMを施して送信する
  2. 再生装置は受け取ったデータを、機器認証の時に受け取っていた鍵で復号化処理して再生する

と言う事になる。
この時のポイントは、

  • あらかじめ鍵がやりとりされているので、この時は再生機器はサーバに情報を送信したりする必要がない
  • DRMの鍵は、ユーザID毎に管理されているので登録されている機器であればどれでも再生できる
  • データのコピーなどは自由にできる。(ファイル再生には制限がある)

と言うところがある。

この他、Marlin DRMのポイントとして、機器認証済み装置の死活管理がされないと言う点もある
一度機器認証された装置はその鍵には有効期限がないので、機器認証サーバの提供サービスが終了しても読むことができるわけである。一方これは権利者側にとっては弱点でもあって、ここで機器認証台数が多くなってしまうと、認証した上でオフラインにすると言う事をされるとコピーできてしまうことになる。このため各社機器認証できる台数を制限しており、ReaderStoreの場合は5台、紀伊國屋の場合は2台といった形になっている。
紀伊國屋は偉い渋い気がするが、そもそも紀伊國屋は自社プラットフォームで他の端末でもよめるので、Readerに限って2台という事を考えるとそれほどでもない。また機器認証は解除する事ができるので、買い換えの際には認証を解除してやればよい。
ただし、この時、機器認証は機器認証している装置の実機がないと解除できないので注意が必要である。譲るときには確実に機器認証を解除してやらないと、自分の機器認証の回数が減ることになる。またPS3の例を見ると、故障した時の救済策はあるようだ。

このようにAmazon KindleやAppleが採用するDRMと同じように、従来失敗したDRMが持つ難点

  • バックアップができない。普通にデータのコピーができない。
  • 対応機器ごとにいちいち認証をしてデータをダウンロードし直す必要がある
  • 鯖が死ぬと購入済みのデータも読めなくなる

と言う所を改善した方式であると言え、AmazonやAppleDRMと同等、あるいはそれ以上に柔軟なDRMである。

さらに、Amazon KindleやAppleが採用するDRMと大きな違いがあある。それは、Marlin DRMはオープンな規格*5であり、囲い込みがなされていない、相互乗り入れが(技術の上では)可能だということだ。
すでに地味にいろいろな所に採用実績がある。一番大きい所はやはりPlayStation商品群だが、この他聞くに、近頃流行のIDに結びつける形のDRMではかなり採用されているとのこと。Panasonic、SONYが中心になっているが、検索すると富士通がミドルウエアを販売するサイトが出てきたり*6外資メーカのライブラリが出てきたりする。またサーバサイド機器、あるいは組み込み向けのライブラリなどもかなり充実しているらしい。
SONY Readerが、自社サイト以外に、楽天、紀伊國屋書店の電子書籍ストアで販売されているDRM付き電子書籍を読めたりするのはここら辺に理由がある。

まとめ

  • SONY Readerの場合も1年ダウンロード制限はそんなに心配する必要はないよ。普通のファイルと同じくバックアップをとっておけばよいだけです。
  • Marlin DRMはAmazonやらAppleやらのDRMと同等あるいはそれよりも柔軟性がある一方、採用実績があり特定のベンダにロックされません。相互乗り入れもされます。
    • 日本のDRMはいろいろアレすぎた過去のイメージがあるが、実際そんなにAmazon、Appleに比べて劣っているわけではない。
  • 紀伊國屋の電子書籍ストアはSONY Readerにも対応してる一方、SONYのReaderStoreはTabletは自社製に限られる事を考えれば紀伊國屋最強説は事実。(品揃え除く)
    • ついでに言うと紀伊國屋の配布アプリだと暗号化処理されてないXMDFも読めたりしてすばらしい(非公式)。
    • SONYはAndroid用Readerアプリを自社製以外の端末に供給しさえすれば、あっという間に同等になれるのに…。(ファイルが元々自由にコピーできるので、専用のクラウドサービス必要無し)
  • 再ダウンロード期限を一年に区切る意味は正直よくわかりません。特にDRMがついてんだったらいらんじゃん。この制限、今後は徐々に消えてくんじゃないっすか?
  • というかなんでこんな事を考えて本を買わないといかんのか。DRMなんざさっさと滅べ。今すぐ滅べ。違法コピーしてDRM強化に繋がる行為をする輩も巻き添えにして滅べ

*1:これはDRMのための要求と言うより、データベースの更新に必要なのではと言う話だけど真相は知らない

*2:購入した以外の書籍は、専用ソフトを使わずに普通にエクスプローラ上からコピーすることも可能。ただしこの場合Reader上でデータベース更新がかかるので大量に入れすぎると時間がかかる

*3:と、書くだけじゃあれなので、可能かどうかSONYに問い合わせを投げてみた

*4:同じ鍵、と言っても良いかもしれないが、おそらくそんな単純な仕組みにはなってないと思われるので、回りくどい言い方をしてみた

*5:金を払い審査に通れば、規格を入手し加盟ができると言う点で。オープンソース等の真の意味でオープンではない

*6:そういえば富士通さん、フルカラーの電子ペーパーデバイスその後いかがですか?