高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

神野オキナ『あそびにいくヨ! 10 わるいことしまし?』

あそびにいくヨ!〈10〉わるいことしまし? (MF文庫J)

あそびにいくヨ! 10 わるいことしまし?』

著/神野オキナ イラスト/放電映像

発行/メディアファクトリー MF文庫J

 キャーティアからの贈り物、軌道エレベータを設置してしばらく。沖縄の地でもまだまだこたつが手放せない季節。各国政府はお互いに批判し合い、外向的に全く進展のない状態になってしまっていた。そんな中、加熱する地球のマスコミの対応に追われ、エリスは、警備として地上に滞在しているもう一人のキャーティア、セルカもいるが、エリスは多忙を極め、学校へも満足に通えなくなっていた。 一番はじめに異常に気づいたのは騎央だった。僅かな時間を二人で過ごし、そして再び地球とキャーティアのために動き出す騎央とエリス。騎央は、アントニアたちとともに、再びキャーティアの母艦を訪れる事になる。人なつっこいキャーティアの人々の歓迎をひとしきり受けた後、騎央は、地球人類は、ついにキャーティア本星との通信を繋いだ直接会談に臨むことに。そこで、騎央は、キャーティア達に、一つの要求を提示されることになる……。
 そして騎央達が帰還した翌日。昨夜から様子のおかしかったエリスが、ついに朝起きてこなくなり……。

 ねこみみ宇宙人とファーストコンタクトで、でも結構ちゃんとSFなあそびにいくヨ!シリーズの十冊目。

 やっとの、久々の新刊であります。短編集が去年の九月で、本編に至っては、9巻が2005年の12月ですから、実に一年以上ぶりの本編新刊であります。

 今回は  遅々として進まない地球の外交に、キャーティアの本星は、しびれを切らしてついに一つの要求を投げかけてきます。

 物語的にはここら辺がメインなのですが、やはりあれですか。今回はエリスが地球の風邪にかかります。というか、お互いに忙しくなってきています。そんな中で、何となくゆっくりと、ゆったりと交流をするエリスと騎央のふたり……いや、アオイも含めての三人でありましょうか。
 特に、今回はこの三人の心の絆というか、すっかりなんか、一緒になってるなーというか、自然に肩の力が抜けている感じがなんともいい感じ。

 また、騎央の成長がなんとも。今回の主人公はエリスでもアオイでも他のキャーティアでもなく、間違いなく子だったという感じであります。何というか、己を知り、自分ができることと、そうじゃないことをちゃんとこころえて、そして落ち着いて自分のできることをやっていく、みたいな感じが出ています。ここら辺は書いてしまうと気をそいでしまうので多くは語らず。

 そしてエリスやアオイたちはもちろん、他の人たちも騎央を信用して、というか仲間としていろいろ任せてやっていく、といった感じがなかなか。

 そして忘れちゃいけない幼なじみの真奈美でありますが、彼女も今回は風邪で、ほとんどベッドの上から、何となくアシストロイド達とまったりと、インターミッションの要所要所の場面で、なんとなくほっこり出てきます。それがまた、なんともかんとも。

 また10巻の短編集で出てきたアントニアのメイド権同級生の彼女とか二人の見習いメイドも出てきます。さらに9巻の終わりで登場した、新しく地上に常駐することになったキャーティアの少女セルカは、今回はエリスとともに表紙になっています。

 というわけで、以下ネタバレ含む。

 そして忘れてはいけないのは犬の人であります。 今回は着物姿のジェンス中尉が、再び復活して動きます。キャーティア側にコンタクトを取り、そしてついに……。
 というか、そのジェンス中尉の日常というか、ジェンス中尉の周りを取り巻く人々のこの雰囲気というか、感じが、なんともあそびにいくヨのはじめから何回も読んでいる身としては……特にラストは、あぁよかったなぁ……という感じがいたしまして。

 実は結構後がない感じなのか? という感じなのに、雰囲気は全体としてやさしい感じというか、やっていこう! という前向きな雰囲気があるのはいい感じ。キャーティアの方々も、きちっとしているんだけど、なんとなくほんわかしているし。

 だけれど……今回イラストはどうしたんだろう? とちょっと思うこといろいろ。とりあえず枚数が少ないというか、背景が無いというか……。口絵の人物紹介がうまくデザインしてあるけれど、今までの絵を再構成して作ってあるわけで。また、後書きの日付が今年一月になっているのだけれど……。まぁ、一読者が心配する事じゃないかもしれませんが。ともかく。

評価は10中8.5。今回は次への助走の話。続きはできたらお早めに、と願いつつ、続きを待ちつつ。