高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

神野オキナ『あそびにいくヨ! 9 ねことみんなのいろいろと』

あそびにいくヨ!〈9〉ねことみんなのいろいろと (MF文庫J)あそびにいくヨ! 9 ねことみんなのいろいろと』

著/神野オキナ イラスト/放電映像

発行/メディアファクトリー MF文庫J

 ほんわか日常の中にえすえふ、ねこみみ宇宙人があそびにくる話でおなじみ、あそびにいくヨ!シリーズ初の短編集。純粋に短編集として、そして一部時間がオーバーラップした一つの時間をいくつかの人の物語を書くという短編連作的な物語であります。大変おまちかねな最新刊でございます。

 では、いってみよう!

 ねこもはしるねんまつでし

 年末。キャーティアというかエリスが地球というか、騎央のうちにやってきて初めての年末。  エリスと騎央のふたりと、アシストロイドたちであわただしく年末の大掃除と年越しの準備。沖縄そばを用意したりしているうちに、だんだんみんながあつまりはじめて。 そこには、普段は沖縄を離れている騎央の両親も帰ってきたり。

 なんとなく「ハレ」の日の年末ながら、何となく日常、な第一話であります。つーかなんつーかゆったりというか、なんかちゃんとそこにある日本の年中行事なんだけれど、だけどやっぱり非日常なひとたちがこうあつまってくるというそういうなんともにぎやかで、これがこの物語の全編に流れるこういう雰囲気がいいんだなーと改めて思ったり。

 また、人間関係を整理するというか、再び関係を浮かび上がらせた感じであります。

 以下ネタバレ含む。

 つーか、一番驚いたのは雄一叔父でありましょう。というか、自分おっさんキャラが好きなのでありますが、「やるな(にやり)」という感じであります。
 ところで、この雄一叔父は騎央からみて、きっと母方に違いないと意味不明の確信を(ぉ

 それから、糸嘉州せんせー。さすがです。

 いだいなるさいしょのあしすとろいど

 騎央は、エリスから「最初に作られたアシストロイド」がやってくるという話を聞く。 騎央はそれを聞き、ふつうにアシストロイドのおじいちゃんか、おばあちゃんがやってくるんだ、と気楽に思ったが、しかし、なんとなくエリスの元気がないことに気づく。 浮かれるアシストロイドたちと、すこし元気のないエリス。
 そして、最初のアシストロイドがやってくる……。

 ちょっとしんみりとする……なんというか、エリスたちキャーティアたちの社会について、そしていろいろなことについて思いをはせる、そんな物語であります。
 淡々と、あるべきことを語るような物語でしんみりしながら、そしてかなりSFらしい話であります。いろいろとここから発展して考えると……。 というか、これについて感想を書くと完全にネタバレになりそうなので、あんまりあれなんでありますが……。

 というわけで、以下ネタバレ含む。

 たぶん、エリスたちキャーティアの、あのお人好しさ明るさや円熟した考えかたは、いろいろとやっぱりひどい過去があったりしたりとかしたんだろうなーと思うと……なんかいろいろと切なくなってきたのであります。
 そして、長い旅をして……。

 物語のキーとして使われるものに、アニメソングがあります。 それがなんともいい味をだしていて……。
 だけど、一言。メディアファクトリーよ、これだったらJASRACにちょっとぐらい払ってやれよとおもったりとかした。まぁあともかくですが。


 かこからなにがおってくる?

「過去が……追って……来た」
 アオイが、入国管理局の非合法職員だったころの私書箱に来た手紙。 それは「燃える薔薇」……元CIAの発火能力者……一年前、アオイと戦い、海の藻屑と消えたはずの女からの手紙だった……。
 「おばあちゃん」へ会いにゆくという二人のパートナー……アシストロイドを送り出し、アオイはひとり武装をする。キャーティアからもらった強化服をブレスレットを外し、そして、度の入っていないめがねを外し、よみがえる過去をみつめながら、ひとり、約束の場所へと向かう……

 アオイの視点による、アオイの過去の話。壮絶な過去と、そして今と。 物語は、今のアオイと、そしてアオイ自信が思い出していくように進んでいきます。

 自分、最近……特にCDドラマを聞いたころからすっかりものすごい勢いでアオイ派に傾倒しているじぶんでありまして、……ラストに、なんか泣いちゃったんでありますが。仕事でつかれてて、なんか感情の波が激しくなっていたのだけれど、ああーとなんかほろほろと。ぐっときたのであります。

 ただ、ねたばれをするのはアレなので、というわけで以下ネタバレ含む。

 事前にネタバレを読む方に一言。 なんかいろいろ書きましたが、あんしんして読んでください。 とだけ。あとは無粋なので書きません。 つーか、こういう泣きは大好きです。



 ほそうでめいどしゃんはんぜうき(ダイジェスト版)

(※ドキュメンタリーの時の石塚運昇の声で)
「あの、前から摩耶ぽんみたいな人のスールに……」
その一言がすべての始まりだった。 少女、西村ゆきの生活が一変する。
 アンドーラIII。そこは、世界一の資産を持つ少女、アントニアを守るための、場所。そして、その私兵ともいえる武装メイドたちの居城。 そう、彼女は、このアンドーラのメイド候補生として……口頭で傭兵契約書にサインをしてしまったのである。
 彼女が覚えたものは我慢。 そんな一人の少女の物語である。

 って、そんな話ではありません。(ぉ だけれど、あの結構謎に包まれたアントニアのメイドさんたちの実態のちょっとと、そして「スールに……」の彼女のその後が見えます。

 つーか、西村さん。いい娘です。それから、摩耶さんの知られざる素顔が。つーか結構天然なのでありますな。物語としては意外と重要なポジションをしめてくるのではなかろうかという物語でありますな。何となく。つーか、自分こういう話大好きなのでありまして、「ダイジェスト版」があるのならば、ディレクターズカット版とかあるんでありましょうか? と期待しつつ。
 あとがきによると本編にも登場するそうであります。というわけでたのしみにしつつ。

 あしすとろいどぶるぅす


 アシストロイドのなかでもかわりもの、額に「6」とかかれたアシストロイドは、一人の少女と出会う。プラカードを掲げてみたものの……、ろくはすぐに気づく。 その少女、真尋の瞳は、どこにも焦点を結んでいなかったのである。
 6は、すこしづつ、定やんも巻き込みつつ、次第にその少女の元へと通うようになる。そんな風に過ぎていく日々だったがしかし、その間にも、少女真尋の病気は進行し……。

 最後のストーリーは、アシストロイドが主人公の、ちょっとぐっとくるストーリー。 王道的な物語の中に、物語のキーというか、ちいさな主人公二人のよさが光るストーリーです。
 おそらく収録の物語の中で一番サイドストーリーらしいサイドストーリー。一番最後にふさわしい物語でした。

 彼女の将来に幸多かれ、ということで。

 いんたぁみっしょん 他

 インターミッションというか、ストーリーとストーリーのつなぎは、いちかが担当。というか、いちかズでありましょうか。神野オキナ氏の一番新しいシリーズ「うらにわのかみさま」とか、いくつかのシリーズの謎(笑)が明かされたりとかします。


 また、この巻の帯には、あそびにいくヨ!の連動企画ということで、文庫、ドラマCD、ゲーム三つについている応募券で西院入りポスターまたはイラストタペストリーが当たるというキャンペーンの予告が出ております。
 で、あとがきによると、この作品が書き上げられたのは三月だったそうでありますので……また、ドラマCDの四巻は一時Amazonからの予定から消えていて、ちょっと心配していたのでありますが、この時期にどっと出る模様であります。

 そこで! 大胆予想! つーか、きっともう少しでさらなるメディアミックス展開があるんじゃなかろうかと予想なのであります。つーか、これは十中八九間違いないと思うのでありますが。いかがでしょうか。

 まぁともかく。個人的にはシュレイオーと併せてというのはいかがでしょうかという感じであります。期待しつつ。私は短編集も大好きです。というわけで。

評価は10中8.5。次巻もたのしみに。

 そういえば今回の放電映像氏のイラスト、ちょっといつもとタッチが違う感じでありました。これもまたいい感じ。これってあれでしょうか、放電映像氏がご自身の日記にて、SAIというペイントツールで塗った画を公開なさっていますが、なんとなくタッチがにてる……。SAIをお使いなのかしら? などと。