高森太郎の日記。

高森太郎の日記です。

電子書籍について考えてみる。 - クローズアップ現代で電子書籍特集。

 NHKの番組「クローズアップ現代」で、電子ブックの特集が行われていた。(現在時点ではトップページ に掲載されているが、後には放送記録、2004年06月第四週のほうに移ると思われる)それによると、

  • 電子書籍は、グーテンベルグ以来の革命である。
  • 電子書籍は、現在急速に技術革新があり、現在不況の出版業界にとって切り札となりえる。
  • 新しい電子書籍を見る装置(電子書籍リーダ)は高解像度液晶によって非常にきれいであり、コンテンツもそろいつつある。
  • 電子書籍は、希少な書籍な書籍も、中間コストをなくすことができる、保管コストが限りなくゼロである

と言うようなことだった。



 というわけなんだけれど……自分は、結構気になっていて、以前、今のPDAのような分厚い物体で実験していたときとかからず〜っと追っている。そして、最近はヨドバシカメラの電子書籍リーダ売り場をみれば、なんかさいきんやっと種類が出てきたことが分かる。

 というわけで、ぐだぐだと、(ケータイでみる簡易的なものはともかく)本格的な電子ブックについて雑感。

 ここら辺の技術革新で実現されたことのポイントは

  • 一度表示されたら消えない液晶の開発と実用化と量産
  • 一度表示されたら消えず、さらに視野角が広く紙に近い(と言われる)電子ペーパーの開発と実用化

にある。これはどういうことかというと、一度表示させると消えない。そしてページを切り替えるときのみに電池を利用しているので、非常に電力を消費しないということだ。その代わり、レスポンスは悪いらしいが。なので、かなり電池は持つようになったこと。そして、軽量化と薄く出来たことだと思う。で、この段階まで来て市販されるようになった。

 また、ソフトウエア的なことでは、出版社側の視点からだと

  • ブロードバンドが普及してダウンロード販売が現実的になった
  • コンテンツ保護の仕組みが充実してきて、デジタル化しても有る程度保護が可能
  • 作成するソフトウエアの充実が図られてきた

 と言うことが出てきたことがある。


 というわけで、電子書籍の利点、可能性を考察してみる。(可能性として考察)

  • 軽い。一度にたくさん持って歩ける。
  • 販売、所有、運搬が容易になる可能性。古い本を所持していることが、保管費用などがほぼゼロに近い。また、読者も、一枚のカードに数百冊、と言ったことも可能になる可能性がある。また「売れないから絶版」はなくなる。
  • データとして流通するため、出版社がつぶれた場合……コンテンツを移行して販売しやすくなる可能性も。
  • 中抜きの可能性。卸しである販売会社、書店……場合によっては出版社すら抜いて販売できる。
  • コンテンツの観覧時間を制限するなどして、値段を下げるなど、メディアコントロールによる販売形態の多様化ができる
  • 今まで出版で重要なノウハウや、さまざまな障壁となりえてきた部分が消えるため、新規参入の障壁が小さくなる、またプロ、アマチュアの垣根が、内容以外ではなくなる可能性。
  • 新しいメディアということで、世代的に受け入れられやすいという可能性。本と言うと引いてしまう人々は、しかしその半面でデジタルでたくさんの文字を書き、読んでいる。本より、デジタルなメディアの方が受け入れやすいという可能性。
  • また表現が広がる可能性として、
    • 白黒とカラー(今のところカラー端末は出ていないが)の、出版する場合の費用の差ない。
    • 動画、音声など、インタラクティブなものを搭載できる可能性。(今のテキスト重視の恋愛シミュレーションなんかはこっちで出来る可能性が。ゆわばゲームブックの電子版のように選択を入れるなど)
    • 読み方を固定し、最後を先に見ることが出来なくするなどの可能性(ミステリー小説で先にオチを先に読ませない。など。電子的な袋とじ)
    • etc……今までの本よりも、著者が表現することが、安価にできるようになる。
  • デジタルにすると必ず出る利点が利用できる可能性として
    • コンテンツの検索が可能にできる。
    • ページの概念をなくせる可能性。
    • ズームイン、読み上げなど、今までより読めなかった人々も読めるようになる可能性。
  • そして、機械である、ということによる可能性として
    • 浴室、アウトドアなどのシーンで利用できる製品がでる可能性。
    • 現場などで、汚れそうな場所でも、ボタンでページをめくれるため保護ケースに入れたまま利用可能
    • ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などを利用して、作業しながらマニュアルを読むなど(これはウエアラブルコンピュータとの絡みになる)
    • 固定的な機械を利用することによって、さまざまな見方が出来る。
  • さらに。利点と言うか今の書籍の弱点をカバーするものとして
    • 誤字脱字修正ファイルの配信とか(汗
    • 読み捨てられる雑誌などをデータにすれば、省資源で地球に優しい
  • etc……。

 逆に、電子書籍の欠点を考察してみる。(現在の機種が変われば改善されそうなことは挙げていない)

  • 本ならではの手軽さがない。
  • 所有欲が満たされない
  • 電子ブック、コンテンツと電池がなければただの箱。利用できるシーンは今までより確実に限られる場合が有る。
  • 本の質感(特殊用紙をつかった本など)が得られない。(リーダによって質感が今ひとつである)
  • ぱらぱらぱら〜と見ることができない。
  • 衝動買いがおきにくいと言われる。
  • 中古の流通がなくなる。
  • デジタルディバイト(使える人と使えない人との間に生じる差についての問題)が強くなってしまう。
  • 味が無い、あっけないなどの感情的な問題。なじめる、なじめないなど。
  • マーキング、書き込みなどが確実に制限される。
  • ソフトウエア的な制限は、見え方などに限られるが、どうしてもリーダによって見え方が変わってしまう。
  • etc……

 クリアすべき課題、問題点。(これも、技術的な部分は挙げていない)

  • 出版業界の完全な再編を行われることになる。
  • 技術力が無い出版社は、淘汰され、出版すら出来なくなる。
  • 出版不況の切り札といわれるが、これは「出版社にとっての切り札」であり、卸、小売、印刷などの業界にとって救済となりえない可能性が高い。


 そして、現時点での問題点

  • 規格が乱立気味。
    • Σブック
    • ebook(エキスパンドブック)
    • Adobeブック
    • BBeB
    • etc……どれも一長一短。一番汎用性が有るのが……テキストだったりする。
  • 著作権保護機構が、厳しすぎる。
  • まだテスト段階だが、機械が少なすぎる。
  • 現在は、機能が紙の劣悪なコピーでしかない。(拡大すら出来ないものが多い)

 最後に、あるいみど〜でもいいが、しかし自分にとっては重要なこと。

  • やっぱりさ〜、図書館の奥のほうにいつもいるめがねの少女、が電子ブックじゃあんまり萌えね〜(ぉ
  • 読んでいるうちにだんだんうとうと……そして、顔の上に本を載せて眠ってしまって、みたいなのができない(ぉぃ
  • 古いイミダスとか、コロコロとかって、枕にちょうど良いが、電子書籍は枕にはできんよなぁ(ぉぃぉぃ
  • 武器になりません。広辞苑とか(コラ

 総じて、一長一短、そして、本の枠を取り払える代わりに、デジタルの枠にはまってしまうと言うことである。



 で、てめえはどう思うよ、と言う話だが……正直な〜、自分は『本っていったら手軽に知識をえるもの、手軽に楽しむもの』という感覚があって、専用の機会が無いと読めないと言うのはな〜とか思ったり、また、本は紙でもって、読むのが良いのであって、これがなくなるとなると、なんかすげー味気ないと思ってしまう。自分は田舎に住んでいて、有る程度本の置き場書を確保できる環境にいるからかもしれないが、本って言うのは……所有欲というかな、そういうものを満たしてくれるきがするし。

 が、しかし、確実に時代は電子ブックに向かっていくだろうと思う。が、紙の本はなくならない。では、どうなるか、というと……二極化の時代になるのではないかと思う。
 今の、安価な文庫、新書、コミックスなどは電子化へ、そして、ハードカバーや愛蔵版、大判の画集などは紙で確実に残るだろう。なので、淘汰されるのは、文庫などそれに類するものでは無いかと思う。そして……たぶん、普及するとなったら一気に普及するだろう。それこそ、驚くべきスピードで。
 理由は

  • 各出版社は積極的に取り組み、未来投資的にコンテンツ(読める本)の拡充を図っている
  • 今は、ほとんどすべてDTPであろうし、デジタル的にデータが有ると思われる。それらを加工することは、本気になれば比較的容易であり、また、一度システムができればそれほどコストを上げずにコンテンツを拡充できる。

 など、下地が整っているからだ。そしてその時点で、なにか一つキーとなるもの……たとえば

 が発生したとき、半年とかそれぐらいのスパンで一気に環境が整うと思う。


 さて、自分がよく読む範囲だが……ここらへんは、すごくアクティブに柔軟にやっていくところである。事実、MF文庫Jはすでに電子版が存在するし(実験的なものであるが、しかし紙より安い!)、いざ普及するとなったら、あっという間に移行するんじゃないかな。
 そして、個人的な希望。

  • データは、書店に端末を置いて現金で払って買う、などの方法をつくってほしい。その方が物理的なコンテンツ保護になりえるし、決済方法も簡便。さらに自分にとっては本屋さんはコンビニより良く行くし。-データの移動は自由に。バックアップができるようにしてほしい。
  • ただ「紙をエミュレートしました」な電子書籍は要らん。電子書籍ならではのものを
  • 汎用の電子書名を利用できるようにしてほしい。
  • どっかの某規格みたいに「ベンダーコードと暗号キーが無いとファイルとしてみとめません」みたいなのは却下。
  • 簡単に使えるツールを、一般にも配布を。だれでもつくれるオープンな規格を。

 かな。もちろん、統一することももちろんである。この理想だと……XMLスタイルシート定義+メディアファイル、みたいな規格が理想かも。

 とか……。

 今の議論を聞いていると……デジタルカメラ論争に似ている。(記録メディアまで乱立しそうな感じもそっくり)しかし、あちらより数十倍規模が大きい論争になるだろう。いますぐに移行することはありえないと。


 どうだろ〜。こういう話、みなさまはどのように考えますか?